疾患の解説と経緯

スモンの症状

スモン(SMON)という名前は、Subacute myelo-optico neuropathy(亜急性視神経脊髄末梢神経炎)の頭の文字をつなげたものです。キノホルム(clioquinol)という整腸剤の副作用によって引き起こされた薬物中毒であることが判明しており、この薬が販売中止になって以降は新たな症例の発生はなくなりました。男女比は1:3で女性の患者さんの方が多いです。

まず下痢や腹痛などの消化器症状が先行します。もともと薬を服用するきっかけとなった腹部症状とは別に、SMON特有の症状が加わると考えられており、激しい腹痛やお腹の張り、便秘などがみられます。引き続いて急性から亜急性の経過で神経症状が出現します。足先から始まるしびれ感が初発症状であることが多く、徐々に上向しておへそや胸まで広がることがあります。両側性で、下肢末端の方にシビレが強い傾向があります。患者さんの訴えとしては、ビリビリ感、ジンジン感、足裏に何か貼りついたような違和感、締めつけられるような感じなどです。他覚的にも表在感覚や深部感覚が障害されます。

また約半数の患者に運動機能障害がみられます。主に下肢の筋力が低下し歩行が障害されることが少なくありません。位置感覚の障害による失調も加わるため転倒のリスクが高くなります。下肢の深部反射が亢進し、Babinski徴候が陽性になることもあります。重症の場合には上肢にも障害が及ぶことがあります。

視力障害は20~30%の患者でみられます。最重症の場合失明し、約5%の患者が全盲であるというデータもあります。自律神経も障害され、足の冷感、尿失禁などの排尿障害、便秘や下痢、あるいは下痢と便秘の交代といった排便障害がみられます。

神経系以外の症状としては緑色舌苔や緑色便が知られています。患者さんの尿中の緑色結晶の分析結果が、キノホルムが病気の原因であることを突き止める重要な手掛かりとなりました。

キノホルムの服用を中止することで症状は少しずつ回復しますが、感覚、歩行、視覚に様々な程度で後遺症を残します。現在スモン患者は平均年齢が79歳と高齢化しており、スモン元来の症状の上に、白内障、高血圧、脊椎疾患、四肢関節疾患などの様々な身体随伴症状が加わっています。さらに精神症状として不安焦燥、心気症や抑うつなどがみられることもあります。従来スモン患者では少ないとされていた認知症も年々増加傾向となっています。

未成年で発症した例(若年発症スモン)は少ないのですが、成人発症例とは少し症状が異なり、視力障害や痙性麻痺が強いとされています。

スモンに関する調査研究班
研究代表者:独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院長 久留 聡
〒513-8501 三重県鈴鹿市加佐登3丁目2番1号
TEL:059-378-1321

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